2007年02月06日

クワッカリー

クワッカリーとは何か

 イカサマ師やインチキ療法を意味するクワッカリー(quackery)は、アヒルやガチョウの鳴き声を表すquackという擬声語に由来する名称で、クワックサルヴァー(quacksalver)とも呼ばれています。

 クワッカリーには、虚偽の効能効果を標榜した医薬品もどきや化粧品、ブームに便乗した意味のない食品や不必要な栄養補助食品(サプリメント)、そして偽物医療機器の3種類が存在します。

 最初にクワッカリーを選んだのは、補完代替医療とクワッカリーとは切っても切れない表裏一体の関係にあり、明確に区別することが困難だからです。

 アメリカの「NCAHF(反健康詐欺国民協議会:National Council Against Health Fraud)」や「Quack Watch」、イギリスの「Health Watch」など、クワッカリーによる被害を防ぐために活動している組織や団体は、エビデンスがないという理由でほぼすべての補完代替医療をクワッカリーと断定しているほどです。

 しかし、これまで述べてきたように、現代医学の中でも強力なエビデンスに支えられた治療法はごくわずかでしかありません。

 事実、つい最近まで経験的に有効と信じられてきた治療法が無効だった、あるいはかえって有害だったことが次々と明らかになっているのです。

 たとえば、腰痛患者に対する安静臥床の指示は回復を遅らせること、変形性膝関節症に対する関節鏡下デブリドマン(郭清術)による症状改善はプラシーボ効果だったこと、心臓マッサージと人工呼吸の回数の割合は15:2よりも30:2の方が蘇生率が上昇することなどなど、数え上げれば枚挙にいとまがありません。

 したがって、エビデンスの有無を基準にクワッカリーを定義しようとすれば、現代医学が行っている治療法の多くはインチキ療法ということになってしまいます。

 そこで参考までに、FDA(米国食品医薬品局:Food and Drug Administration)が提供しているクワッカリーの見分け方を挙げておきましょう。

【1】いとも簡単に、すぐさま効果が得られると約束する。

【2】「新発見」「奇跡的」「秘密の治療」「唯一」「臨床試験で立証済み」などというフレーズを使って宣伝する。

【3】たったひとつの製品やサービスで、ありとあらゆる病気が治ると主張する。

【4】科学者でも健康管理の専門家でもないイカサマ師が科学的調査などするわけがなく、金を目当てに製品やサービスを売り付けていることを忘れてはいけない。

【5】保証書は販売会社を信用させるためのものであって、実際には返金保証されないことがある。

【6】あまりにもうますぎる話は、クワッカリーの可能性が高い。

 また、健康情報の読み方に詳しい小内亨は、旧厚生省薬務局監視指導課が監修したハンドブックを参考に、以下のような見分け方を示しています。

【1】その製品またはサービスが、他では得られない「秘密の治療」「最新の発見」に基づくものだといっている。

【2】その医療は、自称ヘルスアドバイザーによって訪問販売されていたり、各地で講演を行ったりして、宣伝販売促進されている。

【3】その「奇跡」の製品は、一般誌において信仰療法家グループや宗教団体によって宣伝し、販売促進されている。

【4】宣伝販促員は、その製品またはサービスによって他の人が体験した素晴らしい奇跡について説明している。

【5】事の真偽は別として、その製品またはサービスが、いろいろな疾病に有効であると言っている。

【6】到底真実とは思えないほどの素晴らしい効果が得られると約束している。

【7】その製品や宣伝販促員の説明において、治癒したという人々の感謝の手紙が使用されている。

【8】「奇跡」「奇跡的」「完治」「成功」「万病に効く」といった言葉が宣伝に使われている。このような言葉は科学的ではない。重篤な病気が、一般に通信販売などで治せるわけがないし、素人が自己判断できるようなそれほど重篤でない疾病を治す程度の製品は、到底奇跡的などというものではないのである。

 現在の厚生労働省も、医薬品以外の製品の容器・包装・添付文書・チラシ・パンフレット・刊行物・広告宣伝物・演述による効能効果の標榜を禁じていて、各都道府県知事あてに通知を出して注意を促しています(表1参照)。

表1.禁止されている医薬品的な効能効果の標榜

2-1.jpg

(厚生労働省,無承認無許可医薬品の指導取締りについて,2004)


 こうしてみると、エビデンスの有無が問題なのではなく、文字通り鳴くか鳴かないかがクワッカリーの判断基準と考えてよいのかもしれません。要するに、「ガーガーガーガー」「ピーチクパーチク」「ペチャクチャペチャクチャ」と声高に自慢話をする者は、イカサマ師呼ばわりされても仕方がないというわけです。


巧言簧の如し 顔之厚し

――詩経――


信言は美ならず 美言は信ならず
善なる者は辯ぜず 辯ずる者は善ならず
識る者は博からず 博き者は識らず

――老子――


巧言令色 鮮し仁 

――孔子――
 


 日頃の発言には、十分に注意したいものです。


クワッカリーの有効性

 いくらクワッカリーといえども、セット(期待感)とセッティング(環境設定)次第では驚くような効果を発揮することがあります。とりわけ、その製品やサービスに対する期待感を、信仰心にまで高めることができればなおさらです。
 
 長年にわたって世界中のありとあらゆる治療法を研究してきた Weilは、すべての治療法には以下のような共通点があると結論づけています。

【1】絶対に効かないという治療法はない。

【2】絶対に効くという治療法はない。

【3】各治療法は互いにつじつまが合わない。

【4】草創期の新興治療法はよく効く。

【5】信念だけで治ることがある。

【6】以上の結論を包括する統一変数は治療に対する信仰心である。

 そもそも医療の原型は、シャーマン、呪術医、魔法医、メディシンマン、ウイッチドクター、巫医(ふい)、ヴードゥー僧、カリャワヤ、ユタたちによる原始宗教にあります。

 したがって、クワッカリーに対する信仰心が何らかの効果を発揮しても不思議はありません。

 それが自然治癒なのか、もしくは偶然なのか、それとも未知の力が働いているのかは別としても、プラシーボ効果(placebo effect)が関与していることはまず間違いないでしょう。

 では、プラシーボ(偽薬・シャム治療・クワッカリー)には、いったいどれほどの威力があるのでしょうか。

 プラシーボ研究の第一人者であるBeecherは、プラシーボによる平均有効率は約35%と報告し、つい最近までそれが医学界の常識とされてきました。ところが実際には、35%をはるかに上回ることがその後の研究で判明しています。

 当初は有効とされていたものの、後の比較対照試験によって無効と判断された治療法を再検討したRobertsらによると、かつて現代医学が放棄した治療法の平均有効率は約70%にも達するといいます。

 表2に示すように、中でも外科手術のプラシーボ効果は群を抜いています。この事実は、医学の歴史はプラシーボの歴史、もしくはクワッカリーの歴史だったことを示唆しているのです。

表2.プラシーボ効果の威力

2-2.jpg

(笠原敏雄編,偽薬効果,2002より改変)


 さて、わが国で医療機器を製造販売することは薬事法で規制されていて、厚生労働省や各都道府県の承認を得なければなりません。それゆえ治療器具や検査器具には「医療用具製造承認番号」が明記されているのですが、しかしだからといってその製品の有効性が保証されているわけではありません。なぜなら、2005年3月までに承認された製品には、臨床試験が義務づけられていなかったからです。

 ところが2005年4月、薬事法の改正によって「医療用具製造承認番号」が「医療機器製造承認番号」へと変わり、医薬品と同等の臨床試験が求められるようになりました。

 この承認は3年以内に更新しなければならず、これからは製造承認番号が「医療用具」なのか「医療機器」なのかを確認することが、クワッカリーを見分けるひとつの判断基準となるかもしれません。

 クワッカリーを侮ってはいけません。現代医学だろうと補完代替医療であろうと、比較対照試験によってプラシーボ効果というバイアスを排除できるまでは、有効性という点においてはクワッカリーと大きな違いはないからです。

 ただし、臨床試験においてすべてのバイアスを完全に排除するのは、現在の科学的手法では不可能といわざるを得ません。

 というのも、被験者が臨床試験に参加していることを自覚している以上、自分は実験に参加している、観察されている、注目されているという意識から生じる、ホーソン効果(Hawthorne effect)の影響からは逃れられないからです。

 ある治療法の有効性を主張したいのなら、「われ使った」⇒「治った」⇒「ゆえに効いた」という『三た論法』を繰り返すのではなく、臨床試験によってその治療法の効果を証明する必要があります。そして自然治癒、プラシーボ効果、偶然ではないこと、すなわちその治療法によってもたらされた真の効果であることを立証しなければ、有効だという主張は単なる思い込みや幻想でしかありません。

 だからこそ現代医学は、無作為対照試験(RCT:Randomized Controlled Trial)や二重盲検試験(DBT:Double Blind Test)といった研究デザインを駆使し、ありとあらゆるバイアスを排除しようと昼夜を問わず努力しているのです。しかし、それでもなお以下のようなバイアスが潜んでいる可能性があります。

【1】企画バイアス(Submission Bias)
研究費の獲得や自身のポストなどの問題から、すでに研究者は研究の企画段階からできるだけ有意差のある研究データや結果を求める傾向があり、研究にとって不都合と思われるデータを排除したり、その公表を遅延したりする傾向がある。

【2】出版バイアス(Publication Bias)
研究チームのメンバーも医学専門誌の編集者も、できるだけ有意差のある結果を掲載したがる傾向がある。また、なんらかの形でスポンサーがついている研究は、スポンサーにとって有利な方向へ流されてしまう恐れがある。

【3】方法論的バイアス(Methodological Bias)
研究方法に問題がある場合のほとんどは有意差のある結果となり、また問題が多いほどより有意差のある方向へ偏る傾向がある。

【4】要約バイアス(abstracting bias)
特に要約の内容だけを検索データとしているデータベースが陥りやすいもので、本文より要約の方がより有意差を強調する傾向がある。

【5】計算値上バイアス(Framing Bias)
統計計算上の偏りからくるもので、相対危険率などは陽性バイアスの原因となる。

【6】言語バイアス(language bias)
有意差が確認された無作為対照試験は、自国語よりも英語で報告される傾向がある。

 したがって、どれほど研究デザインが優れていようとも、どんなにエビデンスレベルが高い研究だろうとも、その結果を鵜呑みにすることなど到底できないのです。ことに安全性を評価する場合は、有効性以上により慎重でなければなりません。


クワッカリーの安全性

 クワッカリー(イカサマ師・インチキ療法・健康詐欺師)は、「即効性がある」「万病に効く」「奇跡的な効果」と声高に主張し、さまざまな健康関連商品(医薬品もどき・化粧品・意味のない食品・不必要な健康補助食品・ニセモノ医療機器)を盛んに勧めます。しかし、その安全性を考えるとき、主に3つの問題点があることに気づきます。

 第1は、健康被害という直接的な問題です。

 クワッカリーの宣伝文句の中には「天然だから」「自然だから」「食品だから」という記述がよくみられます。化学製品ではないことを強調し、あたかも副作用がないかのように思い込ませたいのでしょう。

 ところが、天然や自然のものには毒素を含んでいることもあれば、食品とはいえ特定の成分が濃縮されているもの、不純物が含まれているものがあります。さらには、表示成分がまったく含まれていないものや、逆に違法医薬品が含まれていることを表示していないものまであり、安全どころか命に関わる危険性をはらんでいます。

 また、特許番号や利用者の体験談、動物実験の結果、医学博士の推薦、あるいはマスメディアが取り上げた回数も、安全性とはまったく無関係です。なぜなら、いずれも科学的根拠(エビデンス)とはいえないからです。

 エビデンスがあるというためには、ヒトを対象とした対照群のある臨床試験を行い、高い再現性が確認されなければなりません。ところが、クワッカリーは医学の専門家ではないし医学教育を受けていない場合が多く、エビデンスよりも経済的利益を優先します。

 そもそも、利用者が体調を崩すような副作用があったとしても、クワッカリーにその事実を公表する義務などありません。それどころか、表沙汰になるのを恐れて隠そうとするでしょうし、瞑眩(メンゲン)反応や好転反応と称して一時的なものだと説明するでしょう。

 これはきわめて危険なことです。とりわけ高齢者、妊産婦、授乳婦、小児、ならびに医師の治療を受けている患者やCAM(補完・代替医療)を利用している患者は注意が必要です。エビデンスが存在しないということは、どんな悪影響や相互作用が現れるか予測できないことを意味するからです。

 もしクワッカリーから購入した健康関連商品を利用して体調が悪くなった場合は、直ちにその利用を中止して医療機関を受診すべきです。その際、「何を」「いつから」「どの程度」利用して「どんな症状が出たか」を医師に報告しましょう。また近くの保健所か国民生活センター、もしくは消費生活センターに相談し、過去に同じようなケースがなかったかを問い合わせてみるのもよいでしょう。

 第2は、治るチャンスを失うという間接的問題です。

 クワッカリーの被害者は、自分の健康に漠然と不安を感じていたり、人一倍健康に気を付けている割には、現代医学に不信感を抱いていることが多いようです。そこにクワッカリーの付け入る隙が生まれるのです。

 ところが、自己限定性疾患(self-limited disease:ある一定の過程を経て自然に終息する傾向を持つ予後良好の疾患)ならまだしも、命に関わるような危険な疾患が潜んでいる場合、クワッカリーの虚偽誇大広告を鵜呑みにして手を出すと、適切な医療を受ける機会をみすみす逃してしまうことになります。そうなってからではもはや取り返しがつきません。

 また、命に関わるような疾患は、少しでも治療が遅れただけで手遅れになることがあるため、瞑眩反応や好転反応が出現した際にも十分な注意が必要です。

 買い手危険負担(caveat emptor:悪い商品を買ってもその責任は売り手ではなく買い手にある)という言葉を念頭に置き、必要な医療を受ける機会を失うことだけは断じて避けましょう。わが国には「健康のためなら命はいらぬ」という笑えない風潮があるようですが、そろそろ目覚めてもよい時期ではないでしょうか。

 そして第3は、クワッカリーによる心理社会的問題です。

 前述したように、絶対に効かないという治療法は存在しないし、信念だけで治ることもあります。したがって、いくらクワッカリーといえども、それを信じ込むことで何らかの効果が得られる可能性は大きいのです。そしてその効果を実感した者は、『三た論法』を用いて周囲の人々にも勧めるかもしれません。

 ところが、効果が得られない者やクワッカリーであることを見破る者、あるいは体調を崩す者も出てきます。そうなると、たとえ善意の気持ちからだったとはいえ、周囲の信頼と友人を同時に失ってしまい、心に深い傷跡を残す危険性があります。とりわけ勧めた相手が肉親で、不幸にも健康を損なった場合の心理的ダメージは計り知れないものとなるでしょう。

 また、マルチ商法(multi-level marketing:連鎖販売取引)という形態をとるクワッカリーも大きな社会問題となっています。ディストリビューターと呼ばれる販売員が知人を勧誘して顧客とし、その販売網をピラミッド型に形成していくマルチ商法自体は違法ではありません。しかし、虚偽説明や脅迫などの違法行為を含む勧誘、購入実績を維持するための過剰な買い込み、その購入資金捻出のための借金(クレジット契約)といった被害が後を絶ちません。

 そこで国民生活センターや消費者センターでは、マルチ商法を悪質商法として注意喚起を促しています。「健康になると同時に高収入が得られる」という甘い言葉に踊らされ、金銭や友人を失うことのないように十分注意する必要があるのです。

 ちなみに、国民生活センターが注意を呼びかけている販売手口・商法と、2002年〜2006年までに寄せられた過去5年間の相談件数を列挙しますので、ぜひ参考にしていただきたいと思います。

【1】アポイントメントセールス(72,346件)
「当選した」等販売目的を隠して、あるいは販売目的を告げてはいるものの特に選ばれたとして有利な条件を強調して電話等で喫茶店や営業所に呼び出して販売する商法。

【2】アンケート商法(21,806件)
「アンケートに答えてほしい」「アンケートをとるだけです」と言って近づき消費者の警戒心を解かせ、商品・サービスを売りつける商法。

【3】SF商法(38,726件)
閉め切った会場に人を集め、日用品などをただ同然で配って雰囲気を盛り上げた後、最終的に目的の高額な商品を売りつける商法。

【4】お礼商法(1,088件)
アンケートを依頼する等、販売目的以外の行為をした後、そのお礼にと販売目的物を使って掃除や裁縫等をして、巧みに販売目的物を売りつける商法。

【5】開運商法(10,834件)
「購入しなければ不幸になる。購入すれば不幸から免れる」という虚偽説明、「運勢が開ける」「幸福になる」というセールストークだけでなく「家系図をみて・・」「姓名判断をして・・」「手相をみて・・」といった商法。商品だけでなく、占いや祈とうサービス等を提供する商法も含む。

【6】かたり商法(67,002件)
あたかも公的機関や有名企業の職員か、その関係者であるかのように思わせるそぶりやトークで商品やサービスを販売する商法。

【7】キャッチセールス(39,439件)
街頭で消費者を呼び止め、喫茶店や営業所・店舗に連れ込み、商品やサービスを契約させる商法。

【8】クレ・サラ強要商法(7,042件)
売買契約の際に無理やりサラ金等から借金をさせたりクレジット契約を組ませたりする商法。

【9】原野商法(1,732件)
ほとんど無価値で将来の値上がりの見込みがほとんどない土地を、値上がりするかのように偽って売りつける商法。

【10】講習会商法(1,687件)
消費者宅以外の会場で講習会や講演会を開催し商品等を売りつける商法。

【11】サイドビジネス商法(128,117件)
「内職・副業(サイドビジネス)になる」「脱サラできる」等をセールストークに何らかの契約をさせる商法。

【12】士商法(6,503件)
「もうすぐ国家資格になる」「受講するだけで資格がとれる」など資格そのものに関する虚偽の説明でつって、講座や教材を契約させる商法。

【13】下取商法(3,882件)
下取りすることをうたって売りつける商法。

【14】実演商法(3,307件)
実演による販売方法に問題のあるもの。

【15】実験商法(7,070件)
化学実験めいたことをしてみせて、「当該商品を使わないと危険だ」等と不安をあおったり、当該商品がいかに効果的か等の化学的裏付があるように思わせて売りつける商法。

【16】就職商法(3,777件)
仕事やアルバイト等の求人・雇用をかたって人を募り、何らかの契約をさせる商法。

【17】体験談商法(2,787件)
使用・実行して効果・効能があったという体験者の体験談を広告宣伝に利用する商法。

【18】デート商法(8,451件)
主に異性間の感情を利用してデートを装って勧誘する商法。

【19】点検商法(59,830件)
「点検にきた」と言って来訪し、修理不能・危険な状態・期限が切れているなど事実と異なることを言って新品や別の商品・サービスを売りつける商法。

【20】電話勧誘販売(420,967件)
業者が消費者に電話をかけ、または特定のやり方で電話をかけさせ、その電話における勧誘により、郵便等で契約を締結する販売方法のこと。

【21】当選商法(33,932件)
「当選した」「景品があたった」「あなただけが選ばれた」などと特別な優位性を強調して消費者に近づき、商品やサービスを販売する商法。

【22】ネガティブオプション(26,384件)
送りつけ商法。注文されていない商品を一方的に送りつけ、消費者が受け取った以上義務があると勘違いして代金を支払うことを狙った商法。

【23】便乗商法(680件)
何かに便乗する商法。

【24】福祉商法(5,191件)
福祉をうたい文句に商品を売りつける商法。

【25】ホームパーティ商法(681件)
消費者の自宅を会場にして近所の人等を集めて料理や実演等をする販売方法。

【26】マルチ・マルチまがい商法(104,264件)
商品・サービスを契約して、次は自分が買い手を探し、買い手が増えるごとにマージンが入るネズミ講式の取引形態。買い手が次にその販売組織の売り手となり、組織が拡大していく取引方法。

【27】見本工事商法(1,611件)
見本工事のための特別料金だと思わせて売りつける商法。

【28】無料商法(183,345件)
「無料招待」「無料サービス」「無料体験」など「無料」をセールストークや広告にして人を集め、高額な商品やサービスを売りつける商法。

【29】モニター商法(6,121件)
「モニター料を支払う」といって商品を販売したり、モニターになることを条件に商品を特別に(安く)提供すると思わせて売りつける商法。

【30】薬効うたって勧誘(19,527件)
「アトピーがよくなる」「病気が治る」など、本来うたってはいけない薬事的効果をうたって、商品やサービスを売りつける販売方法。

【31】利殖商法(26,637件)
「高利回り」「値上がり確実」など利殖になることを強調して勧誘する商法。


クワッカリーの費用対効果

 クワッカリーの興味は、利用者の健康よりもむしろ経済的利益を上げることにあります。中には自分がクワッカリーだと自覚していない者もいますが、いずれにしろ利益最優先であることに変わりはありません。だからこそ、有効性や安全性の検証をおざなりにしてまでも、あらゆるメディアを使った虚偽誇大広告によって高価な健康関連商品の購入意欲を刺激するのです。

 そもそも、医薬品メーカーでも医療機器メーカーでもない業者が有効性や安全性の検証に時間と費用を割くことはありません。たとえ有効性や安全性が証明できたとしても、薬事法に抵触するために証明された効能効果を標榜することはできないのです。となれば、有効性や安全性の検証を犠牲にしてでも宣伝広告費に多額の費用を投入し、手っ取り早く利益を上げようとするのはごく自然な成り行きです。

 では、クワッカリーによる被害額は一体どれくらいに上るのでしょうか。それを正確に把握するのは不可能です。しかし2003年8月には健康増進法が、2005年4月には薬事法がそれぞれ改正され、虚偽誇大広告が厳しく規制されたことでこれまでの警告や回収命令では済まずに摘発される業者が増えてきました。こうした報道からクワッカリーによる被害額の一部を窺い知ることができます(表3参照)。

表3.過去3年間に報道された薬事法違反事件

hyou3.jpeg

 もちろんこれらは氷山の一角でしかありませんが、クワッカリーにかかる費用はけっして安いとはいえません。支払った費用に見合うだけの効果が得られるならまだ救いもあるでしょう。ところが、健康被害という直接的問題、治るチャンスを失うという間接的問題、金銭や信頼を失うという心理社会的問題が潜んでいることを考えれば、買い手危険負担(caveat emptor:悪い商品を買ってもその責任は売り手ではなく買い手にある)などと悠長なことはいっていられません。自分自身や家族の健康を守るためには、クワッカリーを見抜く能力を養うメディアリテラシー教育や健康リテラシー教育、さらにはフードファディズム教育が必要です。

 ただし、「そもそもクワッカリーはエビデンスとは無縁の宗教である。信じる者は救われ、信じない者は救われないのだから、宗教以外の何物でもない。しかも宗教法人のような優遇措置がないにもかかわらず、製作費や人件費、広告宣伝費をかけて商品やサービスを提供しているわけで、安心感を得た見返りにお布施を差し出すのは当然だ」という考え方があります。

 もっともな意見だと思います。たしかに医療の原型は、シャーマン、呪術医、魔法医、メディシンマン、ウイッチドクター、巫医(ふい)、ヴードゥー僧、カリャワヤ、ユタたちによる原始宗教にあります。戒名に数十万円も支払ったり、結婚式や葬式に数百万円もかけたりしている現代社会からみれば、クワッカリーという宗教にお布施を差し出すのは当たり前なのかもしれません。

 しかし忘れてならないのは、クワッカリーに入信するのは健康な人ばかりではなく、心身を病んでいる人や、死の淵にあって藁をもすがる思いでクワッカリーに望みを託す人もいるという点です。有効性や安全性が証明されていない(証明するつもりもない)のであれば、こうした弱者からのお布施はできるだけ安くしていただきたいものです。

 いずれにしても、購入意欲を刺激するキャッチコピーや宣伝文句に惑わされることなく、メリットとデメリットを慎重に考慮したうえで、各自の責任で入信するかどうかを決めるべきです。


【参考文献&ウェヴサイト】

健康情報の読み方
辞書の中の単語たち
◆米国医師会編『アメリカ医師会がガイドする代替療法の医学的証拠』泉書房,2000.
National Council Against Health Fraud.
Quack Watch.
Health Watch.
◆Moseley JB.et al,A controlled Trial of Arthroscopic Surgery for Osteoarthritis of the Knee,N Engl J Med,347,p81-88,2002.
2005 American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care.
FDA Consumer,Quackery Targets Teens,1990.
◆小内亨『危ない健康食品&民間療法の見分け方』フットワーク出版,2000.
◆小内亨『お医者さんも戸惑う健康情報を見抜く』日経BP社,2004.
厚生労働省,無承認無許可医薬品の指導取締りについて,2004.
◆アンドルー・ワイル『人はなぜ治るのか』日本教文社,1993.
◆小川鼎三訳『図説・医学の歴史』学習研究社,1980.
◆笠原敏雄編『偽薬効果』春秋社,2002.
◆Beecher HK,The Powerful placebo,JAMA,159,p1602-1606,1955.
Roberts AH et al,The Power of Nonspecific Effects in Healing: Implications for Psychosocial and Biological Treatments,Clinical Psychology Review,13,p375-391,1993.
EBMに役立つインターネット.
信州大学医学部医療情報部EBM.
国立国会図書館:医療機器産業について調べるには.
治験ナビ.
国立健康・栄養研究所.
NCAHF Position Paper on Multilevel Marketing of Health Products.
The Mirage of Multilevel Marketing.
The Skeptic's Dictionary Japanese Home Page.
国民生活センター.
厚生労働省:健機能食品・健康食品関連情報.
◆松永和紀『メディア・バイアス』光文社,2007.
メディカル二条河原





posted by Cobin at 21:40 | TrackBack(2) | クワッカリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/32980147

この記事へのトラックバック

健康とか
Excerpt: 医師でない者による偽医療 医師でない者による偽医療は、治療効果が保証されないにもかかわらず、あたかも治療効果が保証されるようにいつわる行為のことである。カルト|カルト宗教に代表され、誤った根拠による...
Weblog: 健康とか
Tracked: 2007-07-26 01:09


Excerpt: 医学と医療の年表医学と医療技術の年表
Weblog: 医薬品、知らないと怖い医薬品の話!
Tracked: 2007-10-10 19:04